小林よしのり

「永遠の0」はやっぱりメロドラマだった

小林よしのり

日々の出来事
2015年 8月 1日


昨日、録画した「永遠の0」を見た。

なるほど、こういう映画が大ヒットするのか。

確かに監督の特に後半部分の作り方は上手い。

CGを駆使した空中戦は確かに快感だ。

 

だが、このお話は、完全に教科書的で、わしとしては

全然つまらん。

 

●主人公の価値観が、どういうわけだか生命至上主義の

戦後の価値観である。

●主人公の戦況分析が、時代の中にいる人間ではなく、

まるで現代からタイムスリップしてきた人間のように

日本軍の失敗を見通している。

●主人公は乱戦を避け、仲間を捨てて逃亡しているのだから、

本来は敵前逃亡で、軍法会議にかけられるはずである。

●主人公の性格が、純粋まっすぐ君で、まるでキリスト

みたいで、感情移入が出来ない。

●戦争未亡人になった主人公の妻が、戦友と不純異性交遊を

してるのに、建て前で美化するのが気色悪い。

『卑怯者の島』の美奈ちゃんの方が正直である。

 

だが、こんなお話でも多くの人々が泣くのだから、不思議だ。

結局、戦争映画と言いながら、メロドラマなのだ。

こういう偽善・欺瞞をぶち壊すために『卑怯者の島』を

描いたのである。

 

だが、わしの感性は一般受けしないだろう。

偽善・欺瞞が一切ない物語であり、これこそが戦争のリアル

なのだが、国民は戦争のリアルより、お涙ちょうだいを望む

のだから、アホくさい限りだ。