高森明勅

アメリカ追従で防衛費が10倍?

高森明勅

2015年 4月 19日
先に、「アメリカ追従は正しい現実的判断」との意見を紹介した。

その背景にあるのは、軍事アナリスト、小川和久氏流の
コストとリスクを検討すれば…」というロジックだろう。

だが小川氏のコスト計算は、田母神俊雄氏+
自衛隊OBグループの
試算と比較すると、大きな隔たりがあった。

前者は今の防衛費の5倍弱ないし6倍位と見積もっていた。

これに対し、後者だと1.3倍ほど。

ところが最近、たまたまこんな意見を目にした。

このまま対米追従を続けていたら、
軍事費の大幅な削減に取り組むアメリカの肩代わりをさせられ、
防衛費は今の対GDP比1%から5ないし10%まで膨らみかねないと。

勿論、この数字にどれだけ確たる根拠があるのか、
吟味しなければならない。

だが、対米依存を続ければコストは安上がりと決めてかかる発想も、
冷静に考え直す必要があろう。

何しろアメリカは、
これから10年間に50兆円も軍事費を削ろうとしている。

毎年、わが国の1年分の防衛費に相当する金額ずつ、
減らしていく計算になる。

だから今後、アメリカが日本に一層の防衛(!?)努力を要請し、
日本政府が極力その要請に応えようと“追従”する可能性は十分、
想定できる。

言う迄もなく、軍事費をただ拡大しても、
戦力構成のバランスを整えなければ、
自立した軍事力にはなり得ない。

防衛費が5ないし10倍に膨らむのであれば、むしろ日本が
自立した軍事力」を備えた方が、遥かに経費節約になる。

馬鹿馬鹿しいにも程がある。

そもそも、経済的に日本より劣る国々が普通に
「自立した軍事力」
を備えている。

それなのにわが国だけ、コスト上の問題でそれが出来ないなんて、
可笑しくないか。

国家主権を巡る問題に、過剰にコスト計算を持ち込む思考法自体、
健全とは言えない。

ソロバンを弾いて、「事実上の米国の被保護国」のままの方が得なら、
それを続ける、
というのだから。

そんな国民は、アメリカをはじめ世界中のどの国からも、
尊敬されるはずがあるまい。