小林よしのり

陛下のペリリュー島訪問に思う

小林よしのり

2015年 4月 9日


天皇陛下がパラオ・ペリリュー島を訪問された。

 

わしは小さなボートでコロール島から渡ったが、前日に天候が

大荒れになった後だったので、まだ波の高さがすごくて、

尻を何度も船底にぶつけながら、水浸しになって航行した。

波が高くなりすぎると、何度かボートを止めて、波の様子を

窺い、再び動き出すという怖さに一時間ほど耐え、ようやく

ペリリューに上陸したものだ。

 

まさか両陛下があんなボートで渡るわけにはいかないから、

ご不便かもしれないが巡視艇に宿泊して、ヘリで行かれる

のは正しいと思う。

 

パラオの様子がニュースで流れているが、小さな島なので、

わしも行ったところばかりだ。

ルポを描かないままになってしまったが、現在執筆中の

例の大作はこの島の戦いが設定の舞台である。

だが史実よりも、センチメンタリズムが通用しない究極の

地上戦での心理劇を描くことに、わしの興味はあった。

 

ペリリューでは米軍を迎え撃つために、島民を避難させたのが、

現在の島民感情の良さに繋がっている。

沖縄戦では本来、首里城で決戦しておけばよかったのに、

南部撤退で長期戦に持ち込んだのが失敗だった。

一般住民を巻き込んでしまったのが、現在の沖縄県民の軍隊

アレルギーに繋がっている。

 

戦争における作戦は重要である。

勝つためなら何でもありだと考えて、道義を軽んじると、

後世に禍根を残すことが確かにある。

次の戦争では、道義なき作戦、大義なき戦争が何を残すかを、

よく考えた方がいいと忠告しておく。