小林よしのり

世に良政府などない

小林よしのり

日々の出来事
2016年3月7日 03:17


『大東亜論』を描いていて驚くのは、明治初期の藩閥政権と、

今の政権が似通っていること、そして自由民権運動の論客たちが、

わしが行う安倍政権批判の論拠と通底した主張をしていること

である。

 

例えば植木枝盛は「世に良政府などない」と断定し、権力を

徹底的に疑え、監視せよ、それが自由民権だと唱える。

 

植木枝盛はルソーの天賦人権説に影響されているが、保守派

から見ればそこに問題点があるにせよ、民主主義・あるいは

民主制を採用する限りは、植木の「世に良政府などない」と

いう国民の側の構えの原則は理解しておかねばならない。

「お上のおっしゃるままに」という感覚では、民主制を採用

する国民としては愚かすぎる。

 

高市総務相、もちろん安倍政権の「メディア・コントロール」

を容認する勢力(自称保守論壇、読売・産経新聞、NHK)は、

明治初期の自由民権の原則にすら到達していない前近代的な

「お上任せ」の封建的な人種レベルだと言える。

 

わしの安倍政権批判は、決して左翼陣営の論拠と同一のもの

ではない。

むしろ明治の近代化を受容する中で、取捨選択しながら日本に

民主制を啓蒙していこうとした士族たちの思想に似ている。

 

『大東亜論』を描く意義はまさにそこにあるのであって、

時代が進行しても、民主制の原則である「言論の自由」や

「権力監視」の構えすら、おそらく日本人には将来的にも

身につかぬのではないかという危惧があるから、描いている

のだ。

 

もちろん思想が露骨に悟られては物語ではなくなるので、

あくまでもエンターティンメントに消化させねばならない。

そこが難しいが、挑戦しがいのある仕事である。