小林よしのり

週刊ポストが特措法を批判している

小林よしのり

皇室・皇統問題
2016年 9月 16日


「週刊ポスト」に「安倍総理よ、天皇陛下に『特措法』

とは何たることか!」という記事が大々的に載っていたので

驚いた。

わしに電話インタビューがあったのだが、このタイトルで記事を

作るとは知らなかった。

編集者の思いっきりの良さ、優秀さが窺い知れる。

 

記事中で亀井静香が、天皇陛下は国政に関する権能を有しない

のだから、退位したいなどと言ってはならないと主張している。

「もっと早く宮内庁が公務を減らすべきだった」などと言っている。

まったく陛下のご真意が分かってないのだ。

そもそも天皇陛下を、お飾りかロボットにしておいて、都合よく

政治利用だけしたいと思っている政治家や自称保守が多すぎる。

 

だが言っておくが、天皇陛下は政府に直接、典範改正を要求した

わけではなく、国民に訴えたのだ。

政府が何もしてくれないから、国民に対する玉音放送となったの

である。

政治的発言になるという批判が起こることも覚悟の上であり、

そこは徹底的に気づかって、「個人として」の発言とも断わって

おられる。

 

天皇陛下は「高齢のため退位をしたい」「皇位を譲りたい」

「公務を減らすことは意味がない」「摂政もダメだ」と明言され、

「皇位の安定的継承を望む」と、国民に理解を求められたのだ。

 

これに対して、国民の80%から90%に上る者が、陛下に感謝して、

陛下の望みを叶えてあげてほしいと願っている。

さらに一代限りではダメだとも国民は思っている。

 

政府はこの国民の声を受けて、皇室典範を改正すればいいだけだ。

 

官邸スタッフの声として、皇室典範の改正には憲法改正が必要に

なると言っている者がいるが、バカバカしい。

憲法の規定通りに、皇室典範の改正をやればいいだけで、

「特措法の退位と即位」の方が、憲法違反になるのは、真っ当な

憲法学者なら自明の理だろう。

 

この記事の最後にも、久能靖氏の発言で、皇室典範の改正には、

憲法第一章の改正が必要になるかもしれないと言っておられるが、

これは誤りだ。

憲法の「国民の総意に基づく」というのは、「象徴天皇の地位」に

関する条文であって、典範の条文までが「国民の総意に基ずく」

わけではない。

どうも典範改正を無理やり憲法問題に結びつけて、阻止しようと

する勢力がいるので、気を付けなければならない。

 

この特集記事の方向性は間違っていない。

天皇陛下の「退位」と「譲位」を特措法で済ませてしまおうと

いうのは、あまりにも乱暴で、天皇の権威を傷つける行為なのだ。

そこを弾劾してくれたのはありがたい。