小林よしのり

「とと姉ちゃん」の戦時中の描写がワンパターンだ

小林よしのり

芸能・文化
2016年 6月 29日


「とと姉ちゃん」が戦時中を描いている。

戦時中の家族はひたすら戦争の犠牲者として描かれる。

とと姉ちゃんの会社の同僚がすべて徴兵されて、

戦地で死闘を繰り広げているかもしれないのに、

主人公は「戦意高揚の雑誌は作りたくない」などと言い出す。

 

この家族は日本が負けてしまっても、戦争さえ終われば

いいのだろうか?

日本の国に勝ってほしいとは思わないのだろうか?

「公的」な感覚がすっぽり抜けて、「私的」な感覚のみに

なっているのが不思議だ。

 

一方、戦意高揚派の区長や国防婦人たちは、悪意を持って

描かれる。

確かにいちいち風紀まで注意する愛国者はウザいとは思う。
戦時中だからユーモアも自粛しろと言われたら、わしは反発
するかもしれない。
自粛の強制は今も地震のときなどに流行るが、大嫌いだ。

卑小な自我を国家大に肥大させて、他人を売国奴か反日に

認定すれば、自分が上位に立てると勘違いするような

馬鹿も大勢いたのだろう。
自粛や不謹慎を強制するのはそういう
現在のネトウヨ的な
体質の連中だ。

 

だが、一旦、国が戦争を始めたら、あとはもう勝利を願う

しかないのも事実だ。

まさか「我が国負けろ」「外国に占領されろ」「この国は消滅

しちまえ」と思う者などいないだろう。

 

とと姉ちゃんたちは、国が行っている戦争について、どう

考えているのだろうか?

こういうドラマを見て、シールズ嬢ちゃんは「家に帰れば

お母さんが毎日、ご飯を作ってくれる幸せ」のために、

安保法制反対で―――ちゅと叫ぶんだろう。

奴隷の平和に安住した幼児脳が増えるだけの戦時中の描き方

しかできないものなんだろうか?

 

戦時中の庶民の描き方は、なんでいつもワンパターンなのだ

ろうか?

わしが描いたらこんなに単純じゃなくなるのだが。