高森明勅

原爆の仕返しはしないでおいてやる

高森明勅

2016年 5月 23日

私は岡山県の出身。

だから小中学生の頃、教室で隣の広島の原爆投下による惨状を、
嫌というほど聞かされた。

だが語られるのは、決まって次の図式。

広島・長崎への原爆投下の悲劇は、日本の軍国主義のせい。

だから、それを反省して平和憲法を守ろう、と。

原爆も憲法も、アメリカからの理不尽かつ無慈悲な「拳骨」、
とは教えて貰えなかった。

でも子供心に、私はこう思っていた。
見ていろ、アメリカめ。いつか必ず仕返ししてやる」と。

残念ながら、
同じ気持ちを共有してくれる友人は余りいなかったが。

後年、ある知人が、在日米軍の司令官と酒を酌み交わした時の、
興味深い話をしてくれた。

その司令官は、アメリカによる原爆投下をどう思っているか、
率直に尋ねたらしい。

その時、彼はこんな答え方をした。

「勿論、断じて許せない。絶対仕返ししてやりたい。
だけどアメリカは今、
同盟国だから我慢して、仕返しはしないで
やるよ」と。

それを聞いて相手は、こんな感想を述べたという。

それが本当の気持ちだろうな。
これまで、
どの日本人にこの質問をしても皆、
もう昔のことだから気にしていない”などと答えた。
そんなはずはない。やっと日本人の正直な気持ちを聞くことが出来て、
安心した。
あれだけのことをやられて仕返しをしようとも思わない
腰抜けなら
、とても同盟国として一緒にやっていけない」と。

しかし残念ながら、同胞の女性が米軍関係者に惨殺されても、

タイミングが悪い」とか当のアメリカに気を使っているような、
情けない国に成り下がっているのが、偽らざる現実。

こんなザマでは、野蛮な核保有国に、あの国はもう1度、
核を落とされても、ヘラヘラ笑っているだけだから大丈夫、
と見くびられるても仕方がない。