高森明勅

「武装せる天皇制」から「天皇の伝統的在り方」へ

高森明勅

2016年 11月 7日

かつて林房雄氏は、明治以降敗戦迄の天皇の在り方を
武装せる天皇制」と呼んだ。

天皇は統治権の総攬者であり、軍隊を統帥する大元帥でもあった。
それは弱肉強食の帝国主義の時代に、わが国が国際社会の荒波を
乗り越えて行く為に必要な「
国のかたち」だった。

譲位の可能性を排除したり、天皇の崩御に際して6・7世紀頃の
大がかりな殯(もがり)
を近代的に「再構成」した儀礼を新しく
創出したりしたのも、
まさに「武装せる天皇制」の必要に見合って
いた。

だが、それは既に過去の物になっている。

ならば、現代における「天皇の伝統的在り方」に相応しい姿を、
改めて探る必要がある。

天皇陛下がこれまで努めて来られたのは、
まさにその為の
模索に他なるまい。

8月8日のお言葉も、そのようなスケールの大きな転換を見据えた
ものではないか。

勿論、「公務の負担軽減」などというレベルの話ではない。