高森明勅

対話より圧力?

高森明勅

2017年 9月 22日

国連総会で安倍首相が演説。

北朝鮮との交渉の経緯を長々とおさらい。

これは、能動的に提示できるビジョンもプランも持っていないから。

言いたかったのは、「対話ではなく圧力が必要」に尽きる。

もう残された時間は多くない」と。

一見、威勢がよさそう。

しかし“圧力”とは、
従来も繰り返されて来た経済制裁に過ぎない。

その強化くらいで、
体制転覆を恐れる北朝鮮の姿勢を変えさせることが、可能なのか。

これまで「対話」が無力だったのと同じように、
「圧力」
も殆ど無効だったのではないか。

そもそも、ロシアや中国が本気で北に圧力を掛ける、
と楽観してよいのか。

ロシアはこれまで北の核開発を助け、
石油輸出も増していることに頬かむり。
国連で制裁が議題になるたび、自分の協力を北や
アメリカに高く売りつける」
(河東哲夫氏)

これまでの制裁措置が北朝鮮の核開発阻止に
役立っていないことは
明らかだ。
中国が北朝鮮への圧力を強化できるかどうかを問うこと自体、
的外れだ。
アメリカが北朝鮮の核問題に気を取られている現状は、
地政学的覇権を狙う中国にとって都合がいい」
(アンキット・
パンダら)

ーなどの指摘の方がリアリティーがある。

「残された時間」は果たして“ある”のか。

もはや国際社会、と言うよりアメリカには、
ギリギリの二者択一しか残されていないのではないか。

ある程度の報復を覚悟で、大規模な武力行使に踏み切る。

その時は、北のミサイルが在日米軍の基地を狙うだろう。

核兵器の使用もあり得る。

それが無理なら、
平和条約締結に向けた「対話」に舵を切る。
そのどちらか。

日本を置き去りにして、米朝協議がある日、
突如始まる可能性だってあるのだ。

安倍首相の演説は、「半人前」国家に相応しい
“甘えた”内容でしかなかった。

まぁ、よりによってこんな時に、
危機対応をそっちのけで、
衆院選をやらかそうと考えている程度の
認識だから当然。

あの演説も、
日本国内の選挙対策のパフォーマンスでしかあるまい。