泉美木蘭

優先席の混み入ったシーン

泉美木蘭

2015年 11月 26日

電車の優先席。
モヒカンヘアーに、鋲の飛び出したライダース、全身にチェーンを
じゃらじゃらぶら下げたパンクロッカーが座っていました。
耳のヘッドフォンからは、チャカチャカと不快な音が漏れており、
パンクロッカーは、身体を揺らしてひとりで楽しんでいます。
そこへ、おばあさんが乗り込んできました。
おばあさんは、パンクロッカーの目の前で荷物を持って立っています。

「くっそう、なんで俺の目の前になんか立つんだよ!
せっかく楽しんでるのによお! ああ、腹が立つ!
さっさと座れ、このクソババアが!」

パンクロッカーは、凄い勢いで悪態をつきながらも、さっと立ち上がり、
おばあさんに座席を譲りました。
すると、席に座ったおばあさんが、チッと舌打ちをして、つぶやきました。

「チッ…このクソガキめ。あんなやつ生きててもなんの価値もないわ」

この捨てゼリフを聞いて、おばあさんの右隣りに座っていたスーツの男性が、
立ち上がって、パンクロッカーのところへ説教しにいきました。
「弱者に向かってあんな態度をとることはないだろう」と。

さて、あなたはこの様子を、おばあさんの左隣りの席で目撃していました。
おばあさんが、あなたのほうを見て、
「ねえ? どう思う? あのクソガキのこと」
と、同意を求めてきました。

さあどうしましょう。一番、道徳的な人は誰なのでしょう。