高森明勅

柳田国男の大嘗祭論

高森明勅

2018年 4月 3日

民俗学の大成者、柳田国男。

彼は貴族院書記官長として大正天皇の大礼に奉仕。

その体験をもとに「大嘗祭ニ関スル所感」なる一文を認めた。

そこには、盛大華美を旨とする即位礼の挙行と、
神聖厳粛を旨とする大嘗祭の斎行とに、一定期間の“間隔”
置くべき事を提案していた。

両者の、儀礼としての性格の顕著な違いを考えると、
極めて真っ当な提案だ。

前者は人々の気持ちを昂揚(こうよう)させるし、
後者は逆に人心の静謐(せいひつ)を求めるからだ。

平成の大礼に先立って、幡掛正浩氏(元伊勢神宮少宮司)

改めて柳田の提案を紹介し、その主旨の実現を呼び掛けた。

だがこの時は、
残念ながら政府の採用するところとはならなかった
(即位礼=
平成2年11月12日、大嘗祭=同22・23日)。

しかるにこの度は、来年の10月22日に即位礼、
少し間隔を空けて)11月14・15日に大嘗祭が行われる。

「(前例は)天皇、皇后両陛下をはじめ皇族方(のご負担)
だけでなく、宮内庁側にとっても(実務上)タイトな日程だった」
(産経新聞3月31日付)との事情からという。

直接の理由は、そうであろう。

しかし、柳田の提案が全く顧慮されなかったとは断じ難い。

百点満点ではないにせよ、亡き幡掛先生も
喜んでおられるのではないか。