高森明勅

「剣璽」とは?

高森明勅

2018年 2月 15日

『産経新聞』(2月15日付)が「剣璽(けんじ)等承継の儀」
について、変な説明をしている。

「天皇の印『御璽(ぎょじ)』、国の印章『国璽(こくじ)』
などを承継する剣璽等承継の儀」と。

「印」と「印章」の不統一は単純ミスだろう。

それよりも、この説明では儀式名の最初に出てくる
「剣」
がすっかり消えている。

「剣」とは何か?

言うまでもなく皇位の“しるし”の三種の神器(じんぎ)のうちの
「宝剣(ほうけん=草薙剣〔くさなぎのつるぎ〕
のご分身)」だ。

では「璽」とは?

御璽でも国璽でもない。

やはり三種の神器のうちの「神璽(しんじ=八坂瓊曲玉
〔やさかにのまがたま〕)」のこと。

新しい天皇が皇位を継承されるのに伴って、宝「剣」と神「璽」
を先帝から受け継がれ、併せて御璽と国璽も新帝のもとに移る。

その儀式が「剣璽等承継の儀」。

御璽と国璽は、儀式名では「等」として略されている。

この儀式は旧皇室典範の時代は「剣璽渡御(とぎょ)の儀」
と称して、御璽・
国璽は儀式名からは全く削られていた。

それは同儀の主眼があくまでも「神器」

受け継ぐことにあるからだ。

産経新聞の記事は本末転倒。

これは産経新聞の無知、不
見識か。

それとも政府の役人がそんな見当外れの説明をしているのか。