泉美木蘭

「医療の発達」に男子の出生を頼る怖さ

泉美木蘭

2016年 9月 17日
男系男子派の百地章氏は、テレビに出るたび
「医療が発達していますから、立派にお子様が生まれる。心配ない」
と主張されるけれども、一人の女性を医療の力で縛りつけて、男子が
生まれるまで何度でも出産させようと考えていることと変わりないし、
そんなことは一般的な感覚とは完全に乖離しており、
女の立場からすれば、はっきり言って、おぞましい。

それにそもそも、「男子の出生」を「医療の発達」に頼るようなことを
堂々と言って
いいのかとも思う。


以前、ライジングの連載で「個人精子バンク」という不気味な現象を
レポートしたけど、ある日本人医師は、
夫が無精子症である夫婦に、
夫の実父から精子提供を受けて、体外受精を行い、計118人もの
赤ちゃんを出産させてきたという。
この医師は、排卵誘発剤を使って多胎妊娠させたあと、そこから胎児を
「間引き」するという手術を行っている。

それが患者さんたちの希望なのだ、と医師は言っているそうだけど、
やはり
私は、このような「医療の発達」の利用には、おぞましさと嫌悪感を
感じてしまう。
そこに喜びの笑顔があったとしても、「どんな手段を使っても構わない」
という人間のエゴを丸出しにした姿には、「醜い」という感覚がどうしても
ぬぐえないからだ。

医療技術に男子の出生を頼るという感性は、こういうおぞましさに
つながっているのでは?
「男系維持」の願望以前の生命倫理の大問題が、背後に控えている
ように思う。