高森明勅

「即位の礼」とは?

高森明勅

皇室・皇統問題
2019年 10月 21日

皇室典範に次の条文がある(24条)。

「皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う」これが御代替わりに
「即位の礼」が行われる法的根拠だ。
但し、誤解されがちだが、即位の礼というのは単一の儀式を指すのではない。
以下の5種類の儀式(全て国事行為)の総称だ。

(1)剣璽等承継の儀
(2)即位後朝見の儀
(3)即位礼正殿の儀式
(4)祝賀御列の儀
(5)饗宴の儀

これらのうち、歴史的に重視されて来たのは(1)と(3)。
(1)は既に5月1日に行われた。皇室行事の「賢所の儀」とセット。
皇位の「世襲」継承の正しさを、「三種の神器(じんぎ)」の受け継ぎを介して、確認する。

(3)は、天皇が国家の公的な秩序の頂点に位置される事を示す。
その為に「高御座(たかみくら)」に昇られる。
「日本国の象徴」というお立場に対応する儀式。
「即位の礼」の他に、皇位継承に伴って必ず行われるべき儀礼として、大嘗祭がある。

特に法的な根拠はないが、皇位継承の歴史そのものに照らし、又、
天皇と国民の関係性を総括すべき国家的な要請から、この度も当然ながら行われる。

しかし、政教分離への配慮とは別に、国事行為は法的には内閣の意思による
行為とされるから、天皇ご自身がお務めになるべき祭祀にはそぐわない。
よって皇室の公的な行事として行われる。
これは、天皇が「民の稲」を皇祖に供え、ご自身も召し上がる祭儀。
前近代には最も普遍的な生業であった稲作を通して、天皇が「国民統合の象徴」
である事を証明する儀礼だ。

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