高森明勅

日本書紀の「女性リーダー」像

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 2月 27日

日本書紀に登場する代表的な女性リーダーの1人、
神功(じんぐう)皇后。
第14代・仲哀天皇の皇后だった。
しかし、九州のクマソ征討の最中、天皇は急に崩御(ほうぎょ)された。
日本書紀には、自らクマソを討とうとされ、敵の矢に当たって
亡くなられた、との一説も載せている。

もしこれが事実なら空前絶後の出来事。
その後、神功皇后は神託を重んじて、クマソを背後から
支援していると見られた、朝鮮半島の新羅(しらぎ)征伐を
決意される。
その時の皇后のご発言はおよそ以下のようだったという。

「戦役を起こして軍兵を動かすのは、国家の一大事である。
もしそれが失敗に終われば、罪は重臣にあることになる。
しかし、それは深く心が痛む。
だから、私は女性であり、至らない身ではあるが、雄大な計画を
自ら決断しよう。
神のお力を戴き、重臣らの助けによって、かの国を攻めよう。
もし事が成功すれば、それは重臣ら皆に功績があったからだ。
失敗したら、私一人の罪だ」と。

まことに潔く、天晴れな勇断ぶりと言わねばならない。
これが正確な史実がどうか。
勿論、その真偽は保証の限りではない。
しかし、古代の日本人にとって、女性リーダーたる神功皇后なら、
かかる場面において、必ずやこうしたご発言をされるに違いない、
と信じられていた。
そちらの事実は疑えないだろう。
少なくとも古代の日本は、決して“男尊女卑”の国柄ではなかった。

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