高森明勅

菅首相の恩返し?

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 9月 18日

菅(すが)内閣が発足した。
私の周囲にはこんな声も。

「菅首相は皇室に“恩返し”をしなくちゃいけないね。
だって、菅首相が首相候補の1人として名前が挙がるようになったのは、
“令和”への改元の際に、内閣官房長官として発表役を務めたから。

あれで一挙に、全国の国民のほとんどに、
その名前を知られることになった。
普段は全く政治に関心が無いような人々にまで、顔と名前を覚えられて、
“令和おじさん”という愛称で親しまれることになった。
知名度では、安倍前首相以上になったとさえ、言えるんじゃないか。

それまでは、官房長官として実務は手堅くこなしていても、
知名度はもう一つパットしなかった。
失礼ながら、小泉進次郎環境大臣の足元にも及ばない、
というのが実情だったはずだ。
ところが、“令和”の発表で一躍、政界で最も有名な政治家になった。

勿論(もちろん)、首相の座を射止める為には、様々な条件が
揃っていなければならないだろう。
前任者の安倍前首相との信頼関係や、これまでの実績、自民党内の
有力者との繋(つな)がりなど。
しかし、それらが全て揃っていても、全国民的な知名度が無ければ、
首相へのハードルはかなり高かったはずだ。
だから、『元号(“令和”改元)無くして菅首相無し』。
その元号は『皇位の継承があった場合に限り改める』(元号法2項)ものだ。

ならば『天皇・皇室無くして元号無し』と言える。
だったら、菅首相は天皇・皇室に対して、“個人的にも”大いに
恩返しをする義理(!)があるんじゃないか」と。

なるほど、そういう見方もあったか。
その恩返しの方法は、長年の懸案だった皇位の安定継承に道筋を
付けること以外には、あり得ないだろう。
もしそれを成し遂げることができれば、菅首相は「令和時代の大宰相」
として、後世から称(たた)えられるに違いない。

人の価値が“目方(めかた、物の重さ)”で計られるのではないように、
政権の価値もその存続期間の“長さ”で計られる訳ではない。
実際に何を成し遂げたかこそが重要だ。
菅首相の奮起を期待したい。
なお、今の憲法下で改元の発表をした内閣官房長官は、
菅氏の他に小渕恵三元首相だけ。
2人共、首相に上り詰められたことになる。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/