高森明勅

傍系主義?

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 9月 9日

皇位継承の「男系維持」を唱える論者の中には、時折(又はしばしば)
突飛な発言をされるケースを見かける。
先頃、「傍系主義」を標榜しておられる方がいて、驚いた。

にわかに真意を図りがたいものの、少なくとも、現在の皇室典範にも
採用されている「直系主義」へのアンチの表明だろう。
直系主義というのは、皇位継承の順序として、先ずは直系の皇族を優先する。
次にもし直系の該当者が不在なら、傍系から血縁の近さに従って継承者を
決めて行く。
そういうルールだ。

先に指摘した「親から子(又は孫)へ直系によって受け継がれてこそ、
天皇という地位(皇位)と皇室の血統(皇統)の継承性・連続性を、
素直に実感しやすい、という心的事実」に照らして、極めて真っ当なルールだろう。

ところが、傍系主義とはどういうことか。
もし直系主義の正反対なら、天皇に直系のお子様がおられても、血縁が“遠い”順番に
継承者を決めて行く、という考え方になる。
傍系「主義」という以上、額面通りに受け取れば、“より”傍系である皇族を
優先するのが、本来の立場でなければならないからだ。

しかし、いくら何でも非常識・不合理過ぎる。
ならば、とにかく直系の皇族は後回しにして、傍系でも天皇との血縁の近い順に
継承者を決めるのか。
しかし、血縁の「近さ」を重んじるなら、どんなに近い傍系の皇族より、
直系の皇族が“もっと”近いに決まっている。

だったら何故、直系をことさら後回しにする必要があるのか。
「傍系」主義というのは、考えれば考えるほど分からなくなる。
勿論、そんな「主義」が制度として採用されることは(国会に最低限の理性が
残っている限り)、100%あり得ない。

それとも、直系主義について、直系に“しか”継承資格を認めないと早合点して、
傍系にも継承資格を認めるという意味で、傍系主義を唱えておられるのか。
それはいくら何でも、無知と誤解の程度が甚(はなは)だし過ぎるのでは
あるまいか。

傍系継承は過去にも多くの実例があったし、それを排除する規範が
登場したこともない。
ただ、天皇との血縁が遠い場合、それだけ「継承」「連続」の実感が薄れがちで、
観念的・抽象的な受け止め方に傾くのは免れない。
特に現代のような時代において、それは一層、権威や求心力、統合性にも
関わって来かねない。

だからこそ、これまで以上に、極力、直系継承を
大切にしなければならないという結論になる。

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