高森明勅

“現状”では男系を最“優先”?

高森明勅

皇室・皇統問題
2021年 1月 5日

共同通信が次のような記事を配信した(1月3日、12時29分配信)。

「菅義偉首相は3日放送のニッポン放送ラジオ番組で、
国会が速やかな検討を求めている安定的な皇位継承策を巡り
『現状においては、男系継承は最優先にすべきだ』と語った。
…一方、旧宮家(旧皇族)の男系男子の皇籍復帰に関しては
『私の立場で発言することを控えたい』と述べるにとどめた」と。

菅首相が、わざわざ「現状においては」と断っている点に、
注意する必要がある。
しかも「男系“優先”」という表現には、女系を“排除しない”含意がある
(あくまでも「男系“絶対”」ではない)。
なかなか巧妙な言い方だ。

旧宮家案について、決して言質(げんち)を与えないのも、従来と変わらない。
菅首相はこの番組で、これまで通り、当たり障りの無い発言をしたに過ぎない。
だから、取り立てて報道する価値があったか、どうか。
このテーマへの、一般の関心を改めて喚起した、という点では無意味とも
言えないが。

なお、旧宮家案で対象になるのは、かつて皇族だった方々(旧皇族)の
子供や孫などの世代(つまり1分も1秒も皇族だったことがない)。
だから、同記事中に「旧皇族」とか、「復帰」とあるのは、正しくない。
念の為に。

国会議員も含めて、「男系維持」論者は、「男系の重み」「男系優先」などの発言が、
とりもなおさず旧宮家案の採用を意味すると短絡しがちで、又、そのような連想も
無理からぬものがあるのだが(むしろ、そうした短絡を“狙った”表現とも言える)、
これまでの政府サイドの言い回しを少し丁寧に検証すると、前者には常に“逃げ道”が
用意されていて、後者と必ずしも直結しないことが分かる。

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