高森明勅

有識者会議「旧宮家系」以外も対象?

高森明勅

皇室・皇統問題
2021年 3月 27日

退位特例法の附帯決議に応える為の有識者会議。
専門家へのヒアリングを行う際に、10の“聴取項目(案)
”を設けている。

その9番目は以下の通り。

「皇統に属する男系の男子を下記①又は②により
皇族とすることについてはどのように考えるか。
その場合、皇位継承順位についてはどのように考えるか。
①現行の皇室典範により皇族には認められていない
養子縁組を可能とすること。
②皇統に属する男系の男子を現在の皇族とは
別に新たに皇族とすること」

この項目が“9番目”に位置付けられていること自体、
同会議のスタンスを示しているだろう。
ちなみに、10番目は「対応方策として、そのほかにどのようなものが
考えられるか」。
だから、具体的な設問としては“最後”に置かれていることになる。
「復帰」という間違った言葉ではなく、「新たに皇族とすること」と
書いているのは当たり前ながら、正確だ。

しかし、気になるのは、「(皇族ではない)皇統に属する男系の男子」
という漠然とした表現が使われている点。
小泉純一郎内閣の時の「皇室典範に関する有識者会議」の報告書では、
「昭和22年に皇籍を離れたいわゆる旧皇族やその男系男子子孫」と
限定的に表現されていた。
それが“敢えて”変更されたのは、特別な理由があるのか。

いわゆる旧宮家系男性“以外”にも、国民の中に「皇統に属する男系の男子」
は多くいる。
それらの人達も対象に加えようとしているのか。
例えば、江戸時代の天皇(後陽成天皇や東山天皇)のお子様が
摂関家(近衛家・鷹司家・一条家)の養子に入ったケースがある。
その系統の人物が何人も(何十人も…か?)知られている。
その1人は「大阪北新地でワインバー…を経営している」(八幡和郎氏)とか。

又、明治以降、16名ほど男性皇族が臣籍降下されている
(うち2名は非嫡出で皇籍になかったので厳密には臣籍降下
ではないが、皇統に属する男系の男子であるのは同じ)。
その子孫の系統も対象になり得るのか、どうか。
そうやって広げるならば、対象者はほとんど際限なく拡大するだろう。
そうなると、皇室と国民の「区別」は当然、曖昧にならざるを得ない。
皇室の尊厳、「聖域」性も揺らぐことになろう。
しかし、上記の設問では、対象者を限定する“線引き”が、
原理的に困難ではあるまいか。

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