高森明勅

女性国民が婚姻で皇籍取得できるなら旧宮家養子縁組も同じ?

高森明勅

皇室・皇統問題
2023年 8月 12日

国民の中で、旧宮家系男性だけが皇室典範で禁止されている
養子縁組(皇室典範第9条)の例外として、“特別扱い”によって
皇族の身分を取得できるというプラン。

これは、憲法が禁じる門地(家柄・血筋)による差別
(憲法第14条第1項)に当たる、との指摘がなされている。
それに対し、いまだに説得力のある反論が示されていない。

先頃は以下のような意見を見かけた。

国民のうち女性だけが婚姻によって皇族の身分を取得する制度は、
本来なら憲法が禁じる“性別による差別”に該当するはずなのに、
皇室は憲法上別枠の「身分制の飛び地」だから違憲とされて
いないので、
旧宮家養子縁組プランも同じように解釈できる、と
(「SPA!」8月1日号)。

しかし、婚姻による皇籍取得が女性国民だけに限られているのは、
内親王・女王は皇族以外の者と婚姻された場合に、
皇籍を離れられる制度(皇室典範第12条)を採用していることの
“反射的”効果に過ぎない。
このような制度が真に妥当かどうかはともかく、
これは憲法第1章が優先的に適用される皇室“内部”のルール。
それらの女性皇族が婚姻と共に皇籍を離脱されるのは、
現在のルールでは皇位継承資格が「男系男子」に
限定されているからに他ならない。

この限定そのものは、憲法上別枠の皇室内部だけのルールとして、
「性別による差別」に当たらないというのが、
差し当たりこれまでの政府見解であり、憲法学界の通説だ。
ところが旧宮家プランの場合はどうか。
皇室内部のルール設定ではない。

一般国民の中から特定の家柄・血筋(=旧宮家系男性子孫)
だけに限定して、これまで禁止されて来た皇族との養子縁組
(皇室典範第9条)を“例外的”に可能とする制度だ。
そうであれば、国民平等の理念に反し、「門地による差別」
に該当することは避けられないだろう。

もし憲法が要請する「世襲」自体がズバリ“男系男子”に
限定した概念ならば、それを根拠として、「憲法の一般規定
(門地差別禁止)VS例外規定(世襲要請)→後者が優先」
という構図の中で、例外扱いも可能になる。
だが、世襲は女性・女系も包含するというのが政府見解であり、
学界の通説なので、残念ながら無理。

なお、女性皇族がご婚姻と共に皇籍離脱される現行制度や、
学界で有力化している「身分制の飛び地」説の問題点については、
以前に公開したブログ「皇室の人権を巡る憲法学における通説の
変遷とその問題点」(令和3年12月20日)など参照。

■記事はこちら
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