高森明勅

陛下のご快癒を祈り奉る

高森明勅

2012年 2月 20日
2月19日、隙間を見つけて皇居坂下門に設けられた記帳所に赴き、謹んでお見舞い記帳をさせて頂いた。

最寄り駅から向かう途中、「観光客が随分いるなぁ」と感じていたが、その殆どの人が、記帳所を目指していたのには驚いた。

皇居外苑では、行きも帰りも人が途切れない。

被災地からも、多くの方が来られていたようだ。

老若男女様々な人が多数、来ていた。

一見して「右翼」という感じの人はいない。

記帳では出身の都道府県名と氏名のみを書く。

私の前の方は奈良県から来られていた。

後で聞いたところでは、私の京都の知人も、同じ日に上京していたらしい。

記帳した後、「やっとスッキリしたー」と声に出していた人がいた。

やや不謹慎な印象を与えかねない言い方だが、よほど陛下のお身体を案じていたのに違いない。

記帳したからといって、陛下のご快癒に直接、繋がるわけでは勿論ない。

それはご本人もよく分かっているはずだ。

それでも、居ても立ってもいれない気持ちで皇居まで来て、記帳を済ませると、ほんの少しだけ気が晴れたのだろう。

その気持ちは、私にもよく分かった。

震災後の陛下は「天皇は斯くあるべし」というお姿を、より鮮烈にお示しになって来られた。

そのお姿は、些か不穏当な表現を許して頂けば、殆ど死を賭しておられると申し上げても、敢えて過言ではなかろう。

私なぞは、その悲壮なご覚悟を拝し、涙ぐみそうになってしまう。

しかし、そうした感覚は、どうやら私だけのものではなかったようだ。

そうでなければ、この日、眼前に見た皇居の光景は、説明がつかないだろう。

陛下の1日も早いご本復を衷心より祈り上げる。