高森明勅

玄関の桜

高森明勅

2011年 1月 8日

例年、お歳暮に立派な桜の枝を頂く。

玄関に白磁の花瓶を据えて差しておくと丁度、新春を迎える頃から咲き始める。

で、この何日くらいが一番の見頃だ。

風情のある贈り物と、いつも感心する。

日本人にとって、花と言えば桜。

菊見とか梅見という言葉はあるが、桜見とは普通、言わない。

花見と言えば桜に決まっているからだ。

かなりへそ曲がりでも「花見に行こう」と誘われて、チューリップや向日葵を連想する人は、まずいないだろう。

神話に登場するコノハナノサクヤビメの名前も、桜の花が咲くのを意味している。

「さくら」という花の名前自体、「咲く」に接尾語のラを付けた語とする説がある(白川静氏『字訓』)。

花はどの花も咲くに決まっている。

でも桜だけがそれを名前にした。

ってことも、いかにもありそうだ。

今年最初の道場当日の明日あたり、玄関の桜は満開を迎えるかもしれない。