高森明勅

小林よしのり氏の最新作『新戦争論1』読了

高森明勅

2015年 1月 23日
小林よしのりさんから『新戦争論1』(幻冬舎)を送って頂いた。

他にやらねばならないことがあるのに、一気に読了してしまった。

恐らく「読者」としては、最も早く読み終えた1人だろう。

尤も、作者の小林さんご本人が、
ブログで読者より先に読了したと自慢しておられた。

あれは一種の反則か。

とにかく、まず刊行のタイミングに驚く。

イスラム国」登場の背景が、思いも寄らぬ視点から、
説得的に解明されているからだ。

それがそのまま、イラク戦争とそれへの日本の参画を擁護し、
讚美した知識人への根本的な批判に直結する。

しかもイラク戦争当時、
恐るべき先見の明を発揮された小林さんが、
戦慄すべき予言をされていて、
早くもそれが的中しつつあるように見える。

沖縄戦を巡る史実を取り上げた
「国民の手本、少女学徒隊」
の章は、涙なくして読めない。

この章を読むためだけにでも、本書を求める価値は十分あるだろう。

20世紀の女性の人権侵害とは『性奴隷』である」
日韓基本条約に立ち返れ」の章も出色。

慰安婦問題と誰より早く、
リスク覚悟で対決してこられた小林氏でなければ描けない内容。

日本人の伝統的な性意識とキリスト教的な倫理観との相違にまで
を届かせながら、国際社会で慰安婦問題を扱う困難さを
熟知した上で、
それを突破する殆ど唯一のロジックを提示されている。

最終章「葛藤の果て『ひょん』と死ぬる」の余韻は実に深い。

この1本で、多様かつ痛烈なメッセージを包含する本書が、
見事に完結する。

まさに現代の日本人に当事者意識と覚悟を問う渾身の問題作。

2』が楽しみだ。