高森明勅

天皇陛下とAKB48

高森明勅

2016年 1月 5日

天皇陛下とアイドルグループAKB48。

その共通点とは?

どちらも小林よしのり氏が作品にしている。

確かに、それはその通り。

『天皇論』と『AKB48論』。

だが今、私が求めている回答は、それではない。

正解は“被災地訪問”。

陛下については、改めて申し上げるまでもあるまい。

畏れ多い言い方ながら、ほとんどご寿命を削りながらのご訪問。

現地に圧倒的な「癒し」と「励まし」を与えて来られた。

一方、AKB48は?

東日本大震災があった平成23年の5月を皮切りに、以後、
毎月(!)、東北の被災地に入り続けている。

去年の8月の時点で52回目、
参加メンバーは延べ469人に
のぼったという(石原真氏)。

これは、あだや疎かな気持ちでやれることでは、あるまい。

胸を打つ逸話も少なくない。

例えば、前田敦子さん、篠田麻里子さんら6人が岩手県陸前高田市に
訪れた時のこと(
平成23年11月13日、第7回)。

雨の中、ステージトラックでミニライブを挙行。

強い雨にも拘らず、多くの子供たちや家族連れが集まっていた。

トラックにはステージ後方に屋根が。

スタッフは雨に濡れないよう、
屋根の下でパフォーマンスするよう
指示して
いた。

ところが、前田さんが一言。

みんなもびしょ濡れで見てくれているから、私たちもびしょ濡れで
やろう。メンバー、前に出よう」と。

6人はステージの一番前まで出て、パフォーマンスを繰り広げた。

この後のハイタッチ会は、数多い被災地訪問の中でも、
最も熱気が込もっていたという。

何だか、昭和3年12月14日の宮城(きゅうじょう、皇居)前広場
での出来事を思い出させる。

この時、昭和天皇の即位を祝う8万人の若者が広場に集まっていた。

雨が降っていたので、天皇のお席だけテントを張った。

これに対し、昭和天皇は
私だけテントの中にいるわけにはいかないね」とおっしゃって、
テントを撤去させた。

勿論、単純には同列に並べられない。

でも、つい連想してしまう。

天皇陛下が東日本大震災直後の3月16日、ビデオメッセージという
異例の形式で、
全ての国民に賜ったお言葉に、以下の一節が。

被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、様々な形で
少しでも多く分かち合っていくことが大切であると思い
ます。

…国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、
被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを
心より願っています」と。

この陛下のお言葉を、恐らく明確な自覚はないにせよ、
事実として最も忠実に実行している日本人は、或いは
彼女たちなのかも知れない。