高森明勅

12月25日は大正天皇例祭

高森明勅

2015年 12月 25日

12月25日、大正天皇例祭。

皇居にある宮中三殿の1つ、皇霊殿で祭典が行われる。

あわせて多摩陵でも。

大正天皇が亡くなられたのは、大正15年(1926)のこの日。

当時、天皇はまだ47歳だった。

先帝以前、3代の天皇については毎年、宮中で崩御相当日に
小祭として「
例祭」が執り行われる(神武天皇と先帝は大祭)。

大正天皇については、
ご病弱というだけの印象を持つ人が多いだろう。

だが多くの漢詩を詠まれ、和歌にも卓越しておられた。

大正天皇が詠まれた御製で、知られている最後の御作は、
次のもの。

「神まつる わが白妙の 袖の上(え)に かつうすれゆく
みあかしのかげ」(大正10年)

この御製についての水原紫苑氏の評。

神をまつる天皇の白い衣の袖の上に、暗いうちはあかあかと
輝いていた灯明の光が、
暁になって薄れてゆくという、痛いほど
鋭利な感覚である。

実に微細なうつろいをさえ、
神に向かう魂に刻まないではいられない
作者なのである。

その傷つきやすい心は詩歌人にとっての恩寵にちがいない。

この不幸な帝王は、
あるいは神に愛された人であったかも
知れないのだ」と。

大帝と崇められた明治天皇と、聖帝
と称えられる昭和天皇の
狭間にあって、
ややもすると改めて注意されることも稀な大正天皇。

しかし、もう少しこの天皇に人々の心が向けられるべきではないか。