高森明勅

消費増税「2年半」延期のセコさ

高森明勅

2016年 6月 1日

安倍首相は、消費税の10%への引き上げを、来年4月から更に
2年半」再延期する。

これで消費税の引き上げは平成31年の10月からとなる。

そもそも、8%への引き上げ自体が失敗だったのは、
今や周知の事実。

だから、延期そのものに反対する声は、小さいだろう。

だが、「再び延期することはない」と断言した安倍首相の
言葉の“軽さ”が、又ぞろ露呈した格好だ。

リーマン・
ショックや東日本大震災級の事態発生を条件としていた
点も、「
本音では…そんな表面的な言葉や定義に拘泥する考えは
なかった」
(産経新聞5月31日付)という。

改めて、安倍首相の「表面的」な言葉は、全てそれとは違う「本音」
が隠されている、
ということが明瞭になった。

だが、延期幅が何故「2年半」なのか。

確たる「経済的」な見通しがあるはずもない。

一方、「政治的」な魂胆はどうか。

まず、安倍首相の自民党総裁の任期が今の(2期6年迄という)
党則では平成30年迄。

よって、政権へのダメージになる消費増税は、次の首相に押し付ける
ことが出来る。

それが嫌なら、党則を改正して3期9年に延長するしかない。

そうなると、安倍首相は“現役のまま”東京オリンピックを
える可能性が出てくる。

又、31年7月には次回の参院選が予定されている。

増税のタイミングは選挙“後”でなければならない。

そこで延期幅が2年ではなく、2年「半」になった。

何とも巧妙でセコい。