小林よしのり

絵の上手さと漫画の上手さ

小林よしのり

日々の出来事
2017年2月13日 01:47


最近、絵のことを褒められる機会が度々あるが、妙に

複雑な感覚が襲ってきて、あまり嬉しいと思わない。

 

「東大一直線」でデビューしたとき、「日本一絵が

ヘタな漫画家」とか「インクのシミ」とか言われたが、

一方で「この絵がいい」とか「ピカソみたいでいい」

とか言う人もいた。

 

人は絵がリアルに近づけば上手いと言う傾向がある。

デッサンが出来たものすごい画力の漫画家は最近多い。

いや、画力のある、上手い漫画家ばかりになってきて、

漫画誌は衰退に向かっている。

 

最近の漫画誌は「女子読者」に支えられている。

女子は「きれい」な絵が好きなのだ。

これが漫画家にとっては恐ろしい罠だと思う。

 

昔の「少年ジャンプ」は一流漫画を小学館や講談社に

独占されて、新人を大胆に起用したため、絵のヘタな

漫画家ばっかりだった。

だが、その絵のヘタさ加減の中に、強烈な個性があった

から、子供たちは、そこに反応したのである。

 

わしは漫画の絵の上手さは、画力の達者さとは、違うん

ではないかと思っている。

画力の達者さでは、プロの画家にはかなわない。

 

岡本太郎が言っていたが、「きれい」と「美しい」は

違うというのが、わしの感覚に一番近い。

 

こういう話を一般人にしてもしょうがない。

「笑えた」「興奮した」「面白かった」「このキャラが好き」

というような漠然とした読者の感想が一番うれしい。

 

絵が上手いと言われるようになったら要注意。

いかにデフォルメするか?

いかに勢いで描くか?

いかに毒を注入するか?

そう心がけていなければ、堕落してしまうと自覚して

いなければならない。