高森明勅

理想と現実

高森明勅

2017年6月13日 03:00

小林よしのり氏が大切な指摘をされている。

政治家は理想に向けた、
そして原理原則を射程に入れた
リアリズムを実現しなければならな
い」と。

民間の言論人は正しい理想を掲げ、
思想の原理原則を真摯に貫くのが「責任」だろう。

一方、政治家はそれを現実に“着地”させるのが「責任」。

そこで政治家に問われるのが「リアリズムの力量」だ。

ただ現実に埋没するのでも、
空論や妄想に引き摺られて現実から遊離するのでもない。

現実を理想に「向けて」着実に変革する“力”が求められるのだ。

一方、言論人はその「リアリズムの戦い」に対し、
適切な理解と共感を持たねばならない。
勿論、
原則を投げ捨てた安易な妥協や行き過ぎた駆け引きは、
厳しく批判すべきだ。

しかし、地道で粘り強い現実変革へのリアリズムの戦いには、
最大限の支援を行い、惜しみ無い拍手を送るべきだ。

にも拘らず、ひたすら着地点が見えない理想ばかりに拘泥し、
リアリズムの戦いを非難し、その足を引っ張って、
己れの正統性や純粋性を誇示するような愚劣な振る舞いも、
これまで見かけることがあった。

今回の「ご譲位」を巡る取り組みの勝因の1つは、
そうした理想と現実の相剋を、
圧倒的多数の国民の支持を背景に、
政治家の誠実な努力と言論人のリアリズムへの共感によって、
良い形で乗り越えることが出来たからに他ならないだろう。