高森明勅

有事に自衛隊は米軍の指揮下に

高森明勅

2017年 9月 8日

国際政治学者、
篠田英朗氏の『ほんとうの憲法』

次のような一節が。

「米軍は現在もなお5万人規模で駐留する。
それだけではない。
日本本土有事の際には、
自衛隊は米軍の指揮下に入るだろう」

さりげなく凄いことを書いている。

わが国の憲法や防衛法制が全く予想しない事態だ。

まさか、そんな事はあるまい、
と考える人が多いだろう。

しかし韓国軍の指揮権も、
有事にはいまだに米韓連合司令部(
司令官は米軍)にある。

日本の自衛隊は、
平時には内閣総理大臣に指揮権があっても、
有事にはどうなるのか。

獨協大学名誉教授の古関彰一氏が発見した
アメリカの公文書による
と、
米軍の指揮下に入る事になっている。

米軍のマーク・クラーク大将が、
米国の統合参謀本部に宛てた機密文書によると、
1952年7月23日に吉田茂首相と口頭で密約を結んだという。

「吉田氏はすぐに、有事の際に単一の司令官
(シングル・
コマンダー)は不可欠であり、
現状ではその司令官は合衆国によって任命されるべきで
あるという
ことに同意した」と。

但し、吉田は
この合意は日本国民に与える政治的衝撃を考えると、
当分のあいだ秘密なされるべきである」と申し出て、
日米の間で秘密にする事で意見が一致したようだ。

この合意は、その時の約束通り“秘密”のまま歳月を経過した。

だがその後、取り消された様子はない。

ならば、「有事の際には、自衛隊は米軍の指揮下に入る“だろう”」
ではなく、
ほぼ間違いなく「入る」はずだ。

その場合、「有事」か否かの判断は誰が下すのか。

米軍によってなされる、と考えるのが自然だろう。