高森明勅

裁量労働制拡大「削除」の教訓

高森明勅

2018年 3月 2日

安倍首相は今の国会を「働き方改革国会」と名付けていた。

その目玉が「裁量労働制」の拡大。

それを“全面削除”する羽目に陥った。

今年の政治日程がスタートして早々の予想外の躓(つまず)き。

どうしてこんなみっともない顛末になったのか。

安倍首相が振り回していたデータの余りの杜撰さに、
自民党内からさえ批判の声が噴出した事実も、その一因だろう。

9月には自民党の総裁選が控えている。

ここで無理をすべきではない、と判断したのではないか。

それが安倍氏にとって吉と出るか、凶と出るかは、
まだ予断を許さない。

だがそれはいずれにしても、政権の方向性を左右する上で、
当然と言えば当然ながら、
自民党内の動きが小さくない力を
発揮し得ることを、
改めて実感させた出来事だろう。

それだけ安倍「一強」に翳りが出ているという事でもある。

今後の憲法改正を巡っても、自民党内の良識派の役割は
極めて重大になるはずだ。