高森明勅

光厳天皇の「祈り」

高森明勅

皇室・皇統問題
2019年 8月 29日

光厳(こうごん)天皇というお名前をどれだけの人が覚えているだろうか。

北朝第1代の天皇だ。
皇太子時代には第95代・花園天皇から厳しい訓戒の書
『カイ(言+戒)太子書(かいたいしのしょ)』を授けられている。
長い皇室の歴史でも殆ど類例を見ない、数奇なご生涯を辿られた
(地獄を二度も見た天皇、とも評される)。
その光厳天皇に印象深い御製(ぎょせい)が伝えられている。

神にいのる

我(わが)ねぎ事(ごと)の
いささかも
我ためならば
神とがめたまへ

「ねぎ事」とは「(神への)願い事」。
だから、自分の神への願い事に、ほんの僅かでも自分自身の為という
部分が含まれていたら、どうか神よ、厳しくお咎(とが)め下さい―と
お詠(よ)みになっているのだ。
天皇の「祈り」に私(わたくし)無し。

その本質を端的に詠み上げられた御製だ。
激動の時代に、まさにその渦中にあられた天皇の御製だけに、
一層、胸に迫る。

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