笹幸恵

読売新聞アンケート

笹幸恵

皇室・皇統問題
2020年 5月 4日
憲法記念日に合わせて読売新聞が
アンケートを実施。

天皇制についての質問では、
「女性天皇」賛成が67%。
共同通信が行なった調査では、
女性天皇に「賛成」「どちらかといえば賛成」が
85%だったというから、それからすると
かなり賛成派が少ないように感じられる。

が、そもそもの設問が興味深い。

(以下、下線は笹)
あなたは、天皇の皇位継承などを定めている
皇室典範を改正して、女性の天皇を認めることに、
賛成ですか、反対ですか。
賛成 67%
反対 8%
どちらともいえない 24%
答えない 1%

皇位継承に関しては、これまで、父方が天皇に
つながる「男系」の天皇だけで、母方が
天皇につながる「女系」の天皇はいませんでした。
あなたは、これまでと同じように「男系」を維持
する方がよいと思いますか、それとも、「女系」も
認める方がよいと思いますか。
男系を維持する方がよい 16%
女系も認める方がよい 59%
どちらともいえない 24%
答えない 1%

あなたは、戦後に皇族の身分を離れた旧宮家で、
父方が天皇につながる「男系」の男性
皇族として復帰させることに、賛成ですか、
反対ですか。
賛成 18%
反対 25%
どちらともいえない 55%
答えない 1%


女性天皇には皇室典範を改正しなければならないこと、
これまで天皇は「男系」で続いてきたことなどを
わざわざ記しているのだけど、それでも
「女性天皇」賛成は7割近く、
「女系天皇」は6割近くにのぼっている。

言うまでもなく、この設問はじつに恣意的。
女性天皇には皇室典範の改正が必要だけれども、
旧宮家の男系男子を皇族に復帰させるのにも
典範の改正が必要だ。それなのに記されていない。
真ん中の設問中、「これまでと同じように云々」というのも、
現状維持バイアスをかけている。
そして「復帰」ではなく、正しくは皇籍の「取得」である。


さらに厳密にいえば、天智天皇や天武天皇は、
父も母も天皇である。彼らは「女系男子」と
カテゴライズすることだって可能なはずだ。
また元明天皇から元正天皇は、女系での継承。
元正天皇の父は草壁皇子だから男系の血筋、
だから「男系で続いてきた」「それが伝統だ」と
強調するには無理がある。
いくらなんでも、天皇となった女性より、
皇子であった男性の血筋を優先するか?
(男系に固執する人は、それでも優先するから
男尊女卑といわれ、原理主義者と呼ばれるのだ)。

ここまで恣意的な設問を設けても、
女性天皇賛成7割、
女系天皇賛成6割。
要するに国民は、一部の原理主義的な血統など
重要視していないのだ。
理由は明らか。
私たちは、天皇の「血」を有難がっているわけではないからだ。

政府は、この明瞭なる結果をも無視するのか?