高森明勅

立皇嗣の礼は延期へ

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 4月 12日
私は4月9日に、「立皇嗣の礼は延期すべきか?」とのブログを公表した。

「内閣がその重要性を理解しているならば、儀式の延期を決断するのが
至当ではあるまいか」と。

その翌日、早速、政府が延期への調整を始めたことが報じられた。
こうした報道が一旦出た以上、もう延期する以外に選択肢はない。
当たり前の判断ではあるが、少し安堵した。
しかし、それに併せて、皇位の安定継承を巡る「本格的な検討」まで
“延期”するとの報道もある。
これはおかしい。

元々、政府が立皇嗣の礼を「皇位継承に関する最後の儀式」と
位置付けていることは、旧皇室令に照らしても、前近代の歴史を顧みても、
およそ妥当性を欠く。

又、敢えて国会の附帯決議を軽んじてまで、同儀式の“後”に
検討を始めなければならない、客観的な根拠はどこにも無い。

もっと言えば、直系の皇嗣(皇太子・皇太孫)と傍系の皇嗣
(皇太子・皇太孫でない皇嗣)を厳格に区別し、格差を設けている
皇室典範の基本的な考え方(8条・11条2項・17条1項1号・19条・22条)
を理解していれば、次の天皇であることが確定している訳では“ない”
傍系の皇嗣の為に、前代未聞の立皇嗣の礼という異例の儀式を、
内閣の判断で行うこと自体、首を傾げる。

いずれにせよ、皇室典範特例法が施行されて既に1年(!)
が経過しようとしている。
附帯決議では「(特例法施行後)速やかに」と要請され、政府も
同決議の趣旨を「尊重」するとの答弁を繰り返して来た。
立皇嗣の礼それ自体の延期は当然ながら、そのことを理由に、
「検討」までもこれ以上、先延ばしするのは逆に、皇室の政治利用
との批判を免れないだろう。

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