高森明勅

国民平等の原則の例外は唯一、天皇・皇族だけという事実

高森明勅

皇室・皇統問題
2021年 5月 26日

過日、津村啓介衆院議員が政府に対し、
憲法が禁じる「門地による差別」に反しない形で、
旧宮家系国民男性が皇籍を新しく取得できる方法があるのかを、
問われた(明確な回答は無し)。

その時、旧宮家系の人々が「(憲法)第3章が規定する
基本的人権を享受する主体」としての“国民”であることを、
内閣法制局に確認しておられる。

これは一見、分かり切ったことを尋ねた、
幼稚な質問のように見えたかも知れない。
しかし実は、用意周到な配慮によるものだった。
と言うのは、ありがちな初歩的誤解として、
憲法第2条の皇位の「世襲」による継承が、
第14条(国民平等の原則を定める)の適用外であることから、
旧宮家系男性がその「門地」によって皇籍を取得することも、
同じように“例外扱い”が許される、と思い込む人がいるかも
知れないからだ。

そこで、予めそのような勘違いを封じる為に、
旧宮家系の人々があくまでも第3章(第14条を含む)の
適用対象である事実を、“念押し”されたのだった。

国民平等の原則の例外とされるのは唯一、
第1章(第2条も含む)の適用を受ける天皇・皇族だけ。
これは、憲法それ自体が(第1章により)その“例外扱い”を
明文で(!)根拠付けている為だ。

その一方で、天皇・皇族が第3章の適用外とされている
(少なくとも十全な適用を受けない)ことは、改めて言うまでもあるまい。
皇室と国民の“区別”は、今の憲法においても厳格だ。

皇統譜に登録されている天皇・皇族は第1章、
戸籍に登録されている国民は第3章の適用を、それぞれ受ける。
旧宮家系の人々も当然、「基本的人権を享受する主体」たる
国民である以上、第3章範囲内だから「門地による差別」は当然、
“禁じられている”と考える他ない。

そもそも、国民の中には、旧宮家系以外にも皇統に属する
男系子孫は広範に存在する。それらの人々と、
旧宮家系の人々を区別する
(心情論・政治論はともかく)
法的根拠すら、ないはずだ

(だから、皇位の安定継承を目指す有識者会議のヒアリングでも、
旧宮家系を特定した聴取項目は無い)。

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