高森明勅

旧宮家系男性の皇籍取得は「憲法違反」という憲法学上の見解

高森明勅

皇室・皇統問題
2021年 5月 13日

皇位の安定継承を目指す有識者会議。
去る5月10日の第4回会合は取り分け重要な意味を持った。
何故なら、憲法上の検討を中心課題としたからだ。

政府・国会がどのような制度改正を行うにせよ、“憲法の枠内”という
限界が当然ある。
その意味で、第4回会合によって、政府・国会が「行えること」と
「行えないこと」が、ほぼ見えて来たと言える。

先ず、憲法上「行えること」は、女性・女系天皇、女性宮家を
認める皇室典範の改正(但し、政治の判断として実際に行うか
どうかは又、別の問題)。

一方、「行えないこと」は、旧宮家系国民男性を養子として迎えるにせよ、
他の方法を採るにせよ、新しく皇籍の取得を認める典範改正や特別立法。
こちらは、今の憲法を前提とする限り、「国民平等の原則」に反し、
“門地(もんち)”による差別に該当する恐れがある。
つまり、「違憲」の疑いを否定できない。
勿論、そのような方策を政府・国会が採用できるはずがない
(百地章氏は異なる意見ながら、孤立した見解に過ぎない)。

従って、“旧宮家案”は事実上、同日の会合によって選択肢から
除外される結果になった、と判断できる。
もっとも、これまで指摘して来たように、政府は元々、早い段階から
この選択肢を除外していたと考えられる。

しかし、今回、現在の憲法学界を代表する東大・京大2人の憲法学者
(宍戸常寿氏・大石眞氏)が揃って、公式の場で憲法上の問題点を
明確に指摘された以上(詳しくは両氏の同会合での「説明資料」を参照)、
この案は誰の目にも明らかな形で“葬り去られた”と言えるだろう。
にも拘らず、メディアはその事実にほとんど気付いていないようだ。
この辺りのメディアの鈍感さは、どうしたことか。
恐らく、憲法という存在を、それだけ軽視している証拠だろう。

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