笹幸恵

正統(しょうとう)こそが万世一系の証???

笹幸恵

皇室・皇統問題
2025年 3月 17日
倉山満の新著『皇室の掟』では、
万世一系の系図の上に「正統(しょうとう)」の
ラインが引かれている。
中世では、
正式に天皇になった方を「正統(せいとう)」といい、
男系男子孫が皇位を継承していった天皇・皇族を
「正統(しょうとう」というのだそうな。

神武天皇の伝説以来、皇位の男系継承を続けていったと
倉山は言っているから、
この「正統(しょうとう)」こそ、万世一系の証と
言いたいのだろう。
実際、今上天皇から神武天皇まで、
「正統(しょうとう)」のラインがきれいに
1本の線でつながっている。

が、かなり無理がある。
まずは欠史八代。

本当に実在したかどうかもあやしいので、
この時点ですでに「男系継承」などと言い切れない。
フツーに考えたらわかる。

次、26代継体天皇。

10人の天皇を差し置いて、
傍系4代を「正統(しょうとう)」。
こちらは仁賢天皇の娘である手白香皇女と結婚して、
ようやく体裁を保ったのだが、
倉山は「男系を女系で補完した」などと、
あくまで男系メインの思考回路。なんでだ。

「皇位」の女系継承である
元明・元正天皇はどうかと思えば、びっくり。

元明天皇どころか、天武・持統天皇すらすっ飛ばして、
天智天皇(38代)→施基親王→光仁天皇(49代)。
えええ〜。
「元明→元正」の流れを男系継承だと強弁するのは
元正天皇のお父さんが草壁皇子だからなのだと
思っていたけど、いや、ナナメ上からのウルトラC。

皇室に詳しくない人でも、
「え、それってアリ!?」と首を傾げるレベルだ。
もはや、天皇が誰で、どのような事績があったのかなど、
倉山にとってはどうでもいいらしい。
念頭にあるのは「男の血」。ひたすら「男の血」。
それも、「一般人の男を皇族にしないのが皇室の掟」
という持論をごり押しするためだけに。

何が何でも男系継承なのだという結論ありきで、
後付けで線を引いたらこうなりました、
という話でしかない。
それぞれの時代に、それぞれの事情があって、
何とか苦肉の策で(あるいは時に争いつつ)、
男も女も力を合わせて皇位を継承してきた、
と見るほうが自然だと思うけど。

男の血をそこまで絶対視するのは、Y染色体信奉者か、
「男はタネで女はハタケ」の男尊女卑のどちらかしかない。

もっとも、女の私からいわせれば、
歴史上の人物の系譜がキレイに連なっているからと言って、
純粋にその父親と子供の血がつながっていると
信じ込めるお花畑が初々しすぎて痛々しい。
(もちろん物語としてはあっていいと思うけど、
それを掟と言い出すに至っては・・・ダイジョウブ・笑?)

人間を知らないとこうなる、の見本かと。