高森明勅

福島からのお歳暮、岩手からの講演依頼

高森明勅

2011年 12月 10日
福島の知人から例年通り、お歳暮を送って頂いた。

ただそれだけのことが、心に沁みる。

今年は伊達鶏のローストチキンと伊達鶏のとりそばセット。

ローストチキンはまだ冷凍庫に入れたまま。

だから、見るからに美味しそうだが今のところ味は分からない。

でも、早速頂いたとりそばは実に美味しかった。

Sさん、お仕事も日々の生活も様々に大変な中、本当にありがとうございます。
数日後、今度は岩手から講演の依頼。

今年3月下旬に岩手で講演を予定していた。
だが、震災で中止に。
講演会場として予定されていた施設自体も、使用出来なくなったとか。

主催の関係者でも、連絡が取れない人がいると聞いた。

その同じ主催者で、来年の同じ3月下旬に、同じテーマで話をして欲しいと言う。

当日は、夕方から都内で講演の予定が、既に入っている。
だが岩手は昼間なので、無理なく応諾出来た。

もし同じ時間帯だったとしても、先約の関係者には申し訳ないが、岩手を優先したはずだ。

震災後、岩手から電話を頂いた時、事情を詳しくお話しになった後、

「先生にはご迷惑をお掛けしてまことに申し訳ありません。
でもこれは中止ではありません。
延期です。
ですから、改めてお願いした時はどうかお出まし下さい」とおっしゃっていた。

それを私は頭の中で勝手に「中止」と処理していた。

しかし、そうではなかった。

「今年の3月には先生に大変ご迷惑をお掛けしましたが…」とお電話を頂いた時、
こちらの方が遥かに「先約」だったと直ちに覚った。

私には何の迷惑も掛かってない。

にも拘らず、震災直後でまだ地元で相互の連絡も十分取れない最中に、
礼を尽くしたお詫びの電話を頂いた。

そして今、震災の痛手をなお抱えながら「延期」という約束を律儀に果たそうとされている。

固定電話の受話器を置いた後、思わず電話機に頭を下げたくなった。