高森明勅

安倍晋三氏に期待しない

高森明勅

2012年 11月 19日
そこここから、安倍晋三首相待望論が聞こえてくる。

だが私は、安倍晋三氏に期待しない。

期待しないどころか、信用もしない。

理由は簡単。靖国神社に対する彼の姿勢が、
まるで信用に値しないからだ。

彼が首相になる前に、何と言っていたか。

小泉首相が就任以来、続けてきた靖国神社参拝は、
誰が次の首相になっても受け継がなくてはならない、
と強調していた。

にもかかわらず、当の本人が首相になっても、
参拝しなかった。

こんな人物を誰が信用できるか。

あとから色々言い訳しても、よけいみっともないだけだ。

先の自民党総裁選の時には、
首相在任中に参拝しなかったことを「痛恨の極み」とまで表現した。

何をいまさらだが、
総裁になって靖国神社の秋季例大祭にあわせて参拝した際は、
「首相になったら参拝するかしないかは申し上げない方がいい」
と早くも逃げをうった。

こうした不様なブレは、
彼が靖国神社への参拝について、
功利打算で判断しようとしていることを、
はしなくも暴露している。

選挙に有利に働くかどうか、
内外への印象が良くなるかどうか等々。

だが靖国神社は、たった1つしかない命を、
祖国のために捧げた方々の御霊を祀る聖地だ。

その英霊への参拝は、首相の崇高な義務である。

ソロバンをはじいて、行くか行かないかを決めてよい事柄では、
全くない。

もちろん、政治家は一切、
打算で動いてはならない、
なんてことは爪の先ほども考えてはいない。

そうではなくて、
政治家は99パーセント功利打算で動いていても、
一方では、損得勘定を越えた聖域が厳然として存在することを、
知らなくてはならない、
と言いたいのだ。

靖国神社は、まさにその最たるものと言えよう。

靖国神社を巡り、ソロバンをはじこうとする政治家に、
期待するわけにはいかない。