小林よしのり

アベノミクスの失敗は消費増税のせいではない

小林よしのり

2014年 11月 28日


アベノミクスとやらの失敗を、消費増税だけに原因を求める

論調には首をかしげる。

消費増税さえしなければうまくいってたのか?

消費税を再び5%に戻せば、人々はお金を使い始めるのか?

わしは否だと思う。

 

株で儲かった富裕層は別にして、安倍政権が誕生して以降、

一般庶民の消費が増えたのは、増税前の駆け込み消費の期間

だけなのである!

 

脱デフレを目標に節度のない金融緩和をして、円安株高に

したところで、国内需要がないから国外に企業が移転してる

わけで、企業は国内に設備投資はしないし、銀行に金が滞留

するばかり、実質賃金は下がり続けているのに、インフレに

なるから、中小零細企業と庶民は苦しくなるばかりだ。

 

今しばらく待ってくれ、アベノミクスの恩恵を末端まで届け

ますからなんて言い訳を信じる者が、まだいるというのが

不思議でならない。

よっぽど権力に寄生する快感を知っている輩なのだろう。

 

トリクルダウン効果は、高度経済成長の時代の神話であって、

少子高齢化・グローバリズムへ向かう日本ではもう通用しない。

富裕層のための経済、強者のための経済、弱肉強食の搾取経済

ではなく、貧困層を中間層へ押し上げていく、「経世済民」の

精神が今こそ必要だとわしは考える。

 

わしはもう60歳を過ぎて、すでに自分がいつ仕事を止めても、

遊んで暮らせる強者になった。

だからこそ、私利私欲抜きで次の世代のことを案じるのだ。

団塊の世代以上の者たちが、なぜ安倍政権を応援できるのか、

理解できない。

若い時は学生運動で反権力を気取っていたくせに、今頃こっそり

右傾化して、弱者を踏みつぶしながら勝ち逃げしようという

根性がまったく情けない。

 

人の道とは何か?人の徳とは何か?

わしは団塊の世代を反面教師として、子供たちに「道徳」を

説く本をいつか作りたいものだ。