小林よしのり

帰国便の機内で「小さいおうち」を見た

小林よしのり

2014年 5月 23日


帰国したが、機内で一睡もできなかったのに、

昨夜も5時間で目が覚めたので、これから

時差の調節をしなければならない。

国内の情報も隙間を埋めなければならない。

 

笹さんのブログ「ぬるま湯のカエル」には感心した。

わしもまったく同じ感覚を持っている。

笹さんがここまで歴史を俯瞰して考えているとはなあ。

帰国の機内で映画『小さいおうち』(山田洋次監督)

を見たのだが、実に上手い視点で描かれていて

面白かった。

笹さんにもぜひ見てほしい。

 

満州事変、支那事変が始まっている昭和初期の日本は、

東京の一般家庭で女中を雇えるほど豊かで、

平和な暮らしを続けていた。

東京はまるで今の日本のように、事態の深刻さに

まるで気付いていないし、

東京オリンピックの開催が期待されていて、

穏やかで明るい。

日米開戦以降に景気が悪くなって、その時はもう

取り返しがつかない事態になるのだが、それでも

不倫が行われるような日常は続いている。

 

現代の若者が左翼の「十五年戦争史観」でその時代を

見ると、日本はもっと暗い時代でなければならず、

元女中のタキの回顧録が奇妙に感じられる。

 

左翼と思っていた山田洋次が、ナショナリストの

視点を皮肉るのではなく、左翼の視点を皮肉る形で、

控え目な反戦映画を作っているのが面白い。

だが、こういう勇ましさのない映画が、

あまり話題にならないのが、

すでに歴史が繰り返している予兆なのかもしれない。