小林よしのり

育鵬社の公民教科書は酷い

小林よしのり

政治・経済
2015年 8月 13日


育鵬社の公民教科書は思想が浅い。

作っている人間の知性に問題がある。

曽野綾子のコラムを使っているのだが、その中には、

人は一つの国家にきっちり帰属しないと、『人間』にも

ならないし、他国を理解することもできないんです

などという記述がある。

これでは日本国籍を取得していない在日朝鮮人や

在日中国人を差別する理屈になる。

 

さらに中東では国民意識のない部族がいっぱいいるが、

あれは全部人間ではないことになる。

中国にも国家への帰属意識を持つ者が本当にいるのか

すらも怪しいが、中国人は人間ではないのか?

 

近代国家には「国民」意識が必要で、民主主義も国家への

帰属意識がなければ成立しない。

だがその感覚を、世界に普遍化するのは難しいし、

国家への帰属意識は、教科書で平然と記述するべきでは

なかろう。

 

さらに曽野氏のコラムにはレディー・ファーストを否定する

記述があるが、これは相当に酷い。

女性に対して、ドアを開けてやる行動は、九州の風土で育った

わしでも心掛ける。

もはやその程度のレディー・ファーストは、日本人も米国の

マネではなく受け入れてもいいと思う。

女性には優しくしたいと思うのは、男性の本能なのではないか?

 

このように「保守」と言っても、懐古趣味を「保守」する連中と、

良き慣習は受容しつつ日本人の魂は守ろうというわしのような

感覚の「保守」では全然違うのだ。

ある意味、「リベラル」を自称しつつ、マナーを全然守らない

野蛮人だって多い。

わしの方が「リベラル」だと思うことはいくらだってある。

右も左も「保守」の意味を全然わかっていないのである。