小林よしのり

「kiss-ass外交」を「満額」と言う隷属民

小林よしのり

政治・経済
2017年 2月 14日


日米首脳会談はリベラル系の米国人からは「kiss-ass外交」

と言われている。

「ケツなめ外交」という意味だ。

そりゃ当たり前だろう。まだ交渉が始まっていない段階で、

51兆円のインフラ投資と70万人の米国人の雇用に貢献

したいと宣言し、ゴルフで仲良しパフォーマンスをして
もらっただけの外交は、
日本では「朝貢外交」と評するのが
常識である。

 

トランプからの回答では、防衛は「現状維持」のようで、

経済はまだ分からない。

FTAに持ち込まれるのは決定だろう。

 

三浦瑠麗氏のように「現状維持」が満額回答で「ホームラン」

と評するのは常軌を逸している。

 

もうとっくにトランプの交渉術に嵌っていて、最初にハードル

を上げておけば、実は現状維持でも、「満額回答」「ホームラン」

と思い込ませることが出来るという、実に簡単なトリックに

引っ掛かって、安堵して、喜んでいるわけだ。

 

日本人はそういうお人よしな面があり過ぎる。

そんな単純さではとても国際社会では生き抜いていけない。

 

なにより日本人の「主体性」のなさが尋常ではない。

トランプの主体性に盲従するだけなら、そこいらの幼稚園児

でもできる。

 

ポンポンと握手の手の甲を叩かれるのも無理はない。

「大丈夫だよ。俺に任せとけ。良きに計らってやるから」と

昨日今日、大統領になったばかりの人間に態度で示されて、

よく屈辱を感じないものだ。

 

アメポチ外交、ケツなめ外交、属国外交、従米・媚米外交は、

極まるところまで行った感がある。

だが日本人は世論調査でも70%がこのケツなめ外交を支持

しているのだ。

もう属国民である自分の精神を客観視することもできなく

なっている。

「親から見捨てられなくて良かった」と万々歳の体なのだ。

 

トランプは大統領就任の宣誓で、「保護主義は国の繁栄と

強化に寄与する」という意味合いの言葉を確かに言った。

本当に「保護主義」を意識して使っているのなら、自由貿易、

グローバリズムは徐々に反転していくことになる。

ただし、側近にいる金融のプロたちが、トランプを騙して

いくのなら、元の木阿弥に戻るだろう。

 

イギリスのメイ首相は「グローバル」という言葉を使ったが、

それは正確には「インターナショナル」という意味だろう。

今どき忘れられた言葉だから、「グローバル」を使ったに

過ぎない。

 

「国家主権」を「市場」に隷属させるグローバリズムで

いいのならEU離脱は必要ない。

あくまでも「市場」を「国家主権」がコントロールする

貿易に転換するのなら、それをインターナショナルな貿易

と言うのである。

 

日本人は、特に知識人は、資本主義とは何かが分かってない。

世界に普遍の資本主義などないという、わしにとっては

自明の感覚が、彼らには欠如しているのである。

それもこれも彼らが日本人の歴史感覚を失っているからに

他ならない。

そのうち、わしが資本主義とは何かも描いてやろう。

なんで漫画家のわしがこんなこと教えねばならないのかが、

さっぱり分からないのだが。