高森明勅

西部邁氏の『堕落論』評価

高森明勅

2018年 1月 24日

1月25日、小林よしのり氏の『新・堕落論』発売。

このタイトルが坂口安吾の『堕落論』
を踏まえている事は
改めて言う迄もない。

その『堕落論』をどう読むか。

西部邁氏の評価を紹介しておく。

「この書はね、僕の密かなバイブルでしてね。
僕の読み方は普通の人とかなりずれるかもしれないんだけれど、
堕落論』を読んだとき、これは大東亜戦争肯定論であると思った。
…もちろん結論は、自分は単に戦争を楽しんでいた迂闊者であり、
運命を楽しんでいただけで、本当の人間を生きてはいなかったと
言います。

敗戦から、これから生きなきゃいけない、
生きるときは、
さまざまな堕落が押し寄せると。
こうは書いてはいないんですけれども、
卑怯とか、打算とか、
臆病とか、軽率とか、
そういうことが生きるということだから、
堕ちるところまで落ち切れと言う。

しかし、同時にこうも言うんです。

人間は弱いものであるから、
いつまでも堕落しているわけにはいかないんだと。

やはり堕落から逃れようとするのも人間であって、
それゆえ、
天皇制でも宗教でも構わないから、
これ以上ない堕落の底で自分の天皇を発見せよ、
自分で自分の崇高な神を発見せよという書物なんですね」
(『快著快読』)

西部氏がどこに力点を置いて読んだかが伝わる。