高森明勅

憲法英語草案の“エンペラー”

高森明勅

皇室・皇統問題
2020年 9月 25日

見落とされがちな事実を1つ。
それは、今の憲法が制定されるに当たり、決定的な役割を果たした
占領当局(GHQ)自身が、新しい憲法(法的な形式・手続きの上では
帝国憲法を改正したもの)においても、天皇は「君主」であるとしていたことだ。

これは差し当たり、いわゆる“マッカーサー3原則”とGHQが用意した
英文の憲法草案から明らかだ。
マッカーサー3原則の第1原則は以下の通り。

「天皇は国家の元首の地位にある。皇位の継承は、世襲である。
天皇の義務および権能は、憲法に基づき行使され、
憲法の定めるところにより、人民の基本的意思に対し責任を負う」

「国家の元首」が、その地位を「世襲」する場合、
普通これを「君主」と呼ぶ。
マッカーサーは新憲法の下でも、天皇は“君主”と位置付けられる
べきだと考えていた。
又、英文の草案では天皇を「Emperor」との表記で統一している。
“エンペラー”とは言う迄もなく「皇帝」を意味する。

皇帝は「帝国の君主」のこと。
従って、GHQ側には、憲法の変更によって、天皇の君主としての
地位を否定する意図は無かった、と見ることができる。
GHQ側にその意図が無いのに、わが国の政府や議会が、憲法において、
ことさら天皇が君主であることを否定しようとするはずもない。

結果、今の憲法でも、天皇が君主であること自体には、
何の変更も無かった。

にも拘らず、現在、この点について、国民の間に否定的、
ないし曖昧な認識が広がっているとしたら、
戦後の憲法学および教育内容の問題だろう。

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