小林よしのり

「今」を味わう人生しかない

小林よしのり

日々の出来事
2023年 11月 17日

「東大一直線」の昔から、人気投票で嫌いな主人公は
東大通が一位だった。
みんなが嫌っているのに、不思議なことにヒットする、
強烈に嫌っている読者がいる一方で、強烈に好きになる
読者がいるというのが、わしの作品だった。

『おぼっちゃまくん』もそうだし、『ゴー宣』シリーズも
そうだし、常に常に嫌われつつ、熱烈なファンがいた。
万人に愛される漫画を描いたことがない。
描けないのだ!

それなのに、打ち切りになった失敗作も含めて、大ヒット
を狙っている。
山っ気なしに漫画家なんてやってられるかという感覚だ。

インドで『おぼっちゃまくん』のアニメが視聴率1位に
なったと聞けば、日本でもやっぱり万人に愛される漫画が
描けるんじゃないかという野心が再び燃え盛ってくる。

この歳じゃもう無理だろうと思いながら、野心が消える
ことはないというのは、いったい何なんだろう?
山っ気が消えることはない。
人間は歳を取れば澄み渡った無の境地になれると思って
いたのに、全然ダメだ。

だが、人間は必ず夢を諦めるときが来るのだ。
わしのような煩悩の塊でも、いつか諦めるときがくる。
そのときまでは「今」を生きるしかない。
どんなにつまらん世の中でも、自分の「今」をとことん
味わって生きるしかない。