小林よしのり

異次元緩和は打ち出の小槌か?

小林よしのり

政治・経済
2015年 6月 9日


内閣府が発表した平成27年1‐3月期のGDPは大幅な

上方修正だったと報じられたから、いよいよ景気が回復

してきたかなと思う人も多いのだろう。

だがGDPの6割を占める個人消費の回復は鈍く、

街角の景気実感は低下している。

 

なんのことはない、GDP年率39%のうち、22%が

在庫の積み上がりによるものなのだ。

消費不振で製品が売れ残って、在庫が増えてもGDPの

統計上はプラスと見做される。

株価だけでなく、GDPももはや実体経済からは

切り離されている。

 

設備投資も4‐6月期の伸びは難しいという声もある。

円安の影響で物価上昇するから、一部企業のボーナス増が

あったとしても、全体的には大して消費は伸びないだろう。

 

そもそも政府が短期政策で経済成長を実現しようとしても、

国民の大半の将来不安が減少しない限り、今より景気が

良くなるはずがない。                                          

 

市場がグローバルになった現在では、国債大量発行で財源を

作り出しても、従来通りの公共事業でばら撒く手法が通用

しなくなっている。

金融緩和の出口戦略がないままに、刷ったカネを政府が

無駄に消耗し続けているだけで、国民の将来不安は

解消するのか?

 

経済成長しかない、この道しかないという政府や国民の

思い込みがあるから、「代案を出せ」と言い出すが、

残念ながら「打ち出の小槌」はどこにもない。

異次元の金融緩和こそが「打ち出の小槌」だと信じ、

それを批判すると、「別の打ち出の小槌」を出せと言う

のでは、精神が未熟すぎで話にならない。

この世にオイシイ話はないという常識に、国民は立ち返る

必要がある。