小林よしのり

「激論クロスファイア」について

小林よしのり

日々の出来事
2019年 4月 9日

「激論クロスファイア」の中で、八木秀次が側室制度の
代替として「医療技術」があると言った。
するとスタジオの空気がドン引きになった。

側室制度は男子を生むための制度であり、皇位継承者が
早死にする時代に多くの子供を作っておく制度でもあっ
ただろう。
だが、医療技術が進歩した現代では、子供の早死には
少なくなったが、あいにく男子は一夫一婦制では思う
ように生まれないということが、皇室の現状を見れば、
証明されている。

当たり前のことで、男女の産み分けは医療技術では
できないからだ。

医療技術で男女の産み分けを行うには、女子を間引き
ながら、何度でも人工授精するしかない。
不妊治療は女性に大変な苦痛を伴わせるもので、
不妊治療で女性の精神が不安定になり、病気になって
しまう例などいくらでもある。
不妊治療を男子が生まれるまで何度でも強いる皇室に
なんか、嫁ぎたいと思う民間女性はいないだろう。

男系固執主義者どもは、不妊治療の大変さを全く考慮
しない鈍感野郎であり、野蛮人である。
そもそも男尊女卑の因習感覚を残したまま、技術に対
する信仰を主張すること自体が、すっかり伝統精神を
失った輩の証明である。

あのとき八木が言ったのは、側室制度なくば、男子が
生まれないという田原氏の主張への解答であり、
まちがいなく「男女の産み分け」=「女子の間引き」
を主張したのだ。
だからこそ常識ある女子アナがドン聞きしたのであり、
スタジオ中がドン引きしたのである。

男子に価値があるのであって、女子には価値がないと
する現在の皇室制度はもう令和の時代にそぐわない。
国民の象徴に女性を立てる、愛子さまを皇太子にする
ことで、ようやく男尊女卑を克服し、女性の時代の
扉を開くことができるのだ。
皇室は男性をこそ排除しているなどという詭弁はもう
聞きたくもない。
国民の象徴に女性がなれないということが、最も唾棄
すべき現代の野蛮なのである!

八木は「皇太子がいなくなる」というわしの主張に
答えなかった。
皇嗣殿下では祭祀の継承ができなくなること、そして
秋篠宮さまは皇太子を拒否されたこと、そのことの
重大さに、男系固執派は気づこうとしない。

テレビでの議論が難しいのは、短時間にどこまで話す
かを瞬時に計算せねばならないことだ。
結局こうして文章で書かなければならなくなる。
そもそも不妊治療の困難さすら知らない野蛮人に、
そこから説明する時間などテレビではないのだ。

しかしあの番組に出て良かったのは、本間智恵アナが
女性の常識としての感覚を見せてくれたことだ。
女性はやっぱりドン引きする。
それこそが「保守」の感覚なのだ。
皇統維持に「医療技術」とぬけぬけと言った時点で、
もはや保守ではないことの証明である。