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2018.08.11(土)

20年前のインタビュー「わしが「戦争論」を描いた理由〈上〉」

 

(byよしりん企画・トッキー)

もうすぐ、『戦争論』出版から20回目の終戦記念日がやってきます!

というわけで、これから数回にわたって、20年前のよしりん先生のインタビューなどを抜粋・紹介して、『戦争論』の意味を再確認してみたいと思います!


わしが「戦争論」を描いた理由〈上〉

――近刊の漫画『戦争論』がものすごい反響だと聞いています。
小林 読者カードは14、5歳から80歳まで広い年齢層の方々からいただいています。
20代が一番多くて以下30代、10代、40代となっています。
なかでも戦争に行かれた旧軍人の方々がよろこんでいただいているという反応がとてもうれしかったですね。

――先生はこの本を靖國神社に献本に行かれたとお聞きしましたが。
小林 ええ、作品つくる前にもお参りしましたから。
ようやく皆さんの気持ちを若い世代に伝える武器ができましたとご報告しました。

テーマは「個と公」
――大変な労作と存じますが、そもそもの執筆の動機とは?

小林 「個と公」がこの本のテーマなんです。
わしの世代は70年安保の後、大学に入っているから、左翼学生運動の波をもろに被ったということはない。
すると何に一番影響されているかというと、個人主義なんですね。
個の確立だとか、個人が一番大事だとずっと思い込んでいた。
それが薬害エイズの運動の中で、ボランティアの学生の一部が個の確立といいながら、その個がやたら揺れ動いていてあやしげな宗教団体や左翼団体などに容易に取り込まれていってしまった。
あるいはその闘いの相手だった厚生省や大蔵省の堕落ぶり―個人の利益、省益優先で、国益が後回しにされているという状況をみるにつけ、個人主義ではだめだ、もっと公共性とか公というものとのかかおりを大切にしなければいけないんじゃないか、と考えるようになった。
個と公というものの回路をどうつないでいけばいいのか。
そのことを説き明かすために、個人と国家が一番結び付いていた戦争という時期を引き合いに出して、個人と国家とのかかわり、あるいは個人主義とは果たして正しいのか、ということを考えようというスタンスで描きはじめたんです。
それで戦争というものをいろいろ調べていくうちに、どうも今描かれている戦争には嘘がいっぱいあるなと。
「従軍慰安婦」について調べ始めてこれはおかしいということがわかってくるにつれ、とすればほかの「南京大虐殺」なども変なんじゃないのか、と調べていくと、やはり相当だまされていたと気付いていったんです。

(中略)

世代間を結んだ!
――そういう発信をしての手応えはいかがですか。
小林 例えば日本がいかにアジアに対して、ひどいことをしたかという本やテレビ番組を見て、今の若者が感動に打ち震えた、というようなことはないんじゃないでしょうか。
ところが、わしの本を読んだ人の感想というのは目から鱗が落ちたとか、感激して何度も泣きましたとか…
戦争についてこれまでマスコミで行われて来た語り方は、世代の断絶はもたらしても、世代を結び付けるということには全然なっていなかった。
でもこの本は確実に孫の世代から祖父の世代までを結び付けている反応になっているわけですよ。
読者の感想のいくつかを紹介しますと、
「我が家で同居している戦争に行った祖父が本書を読んで生きてて良かった、と言いながら号泣しました。
びっくりしました」
(34歳の会社員)

「涙が出ていた。
この本を読んで祖父に謝りたいと思ったからだ。
というのは私か小学三年生ぐらいのころ、今思うと左翼が子供の洗脳のためにつくったような戦争の本をある団体が図書館に寄付した。
それを読んで私はその当時祖父を真剣に怖がり、ビルマで捕虜になっていたことも悪いことをしたから当然と思い、あげくにおじいちゃんも人を殺した?と聞いた。
そのとき祖父は悲しいような、でもあきらめているような顔をしたように思う。
この本を読んで私は祖父にありがとう、と言いたい。
そして祖父のためにも自国に誇りを持とうと思う」
(16歳の女子高生)

「人間魚雷回天で私の兄は死にました。
何度も涙致しました。
この一冊があらゆる世代の人々に広く読まれますように。
私も四年前までわだつみ会に属する左翼でした。
今ようやく『サピオ』その他で左翼の犯した無限の過ちが見えてきました。
言葉につくせぬお礼を申し上げます」
(64歳の主婦)。

こんな感想が山ほどあります。
また、おじいさんたちの世代からの手紙は孫に読めと言われて読んだら感激で泣けたとか、「よくぞ、描いてくださった」という感想が多い。
おそらく漫画なんか読んだことのない人たちが初めて漫画の形式に触れて、そこに自分たちの思いが描いてあるもんだから、あまりのことに、びっくりするんでしょうね。
子供や孫たちには自分たちの思いは絶対届くはずがない、責め立てられながら黙って死んで行くしかないと思っていた人たちが、漫画を通して孫と気持ちが通じ合った、共感できたんですよ。
そういう夢のような光景を、どんどん返ってくる葉書の感想の中に見て、ああ、もう自分の目的は達成されたなと思いました。
とにかく戦中派の祖父からその孫の世代までの三世代を縦に結ぶというのがわしの目的でしたから、それが完成されたと。
今のところ20万部かもしれないけど、読んだ人たちが確実に感動したり、納得したりして、自分の子供や孫と語ることができる、共感で結ばれる、それだけでわしは大成功、勝ったという感覚ですよ。
それができなかったわけでしよ、これまで。
世の中のほとんどが自分たちの体験した真実と反対のことを言っていて、子供たちに戦争の話を始めたら、「もう、うんざりだよ」と拒絶され、ましてや孫に対してはどう語ればいいか、見当もつかなかった。
そんなお年寄りたちの置かれた状況を、漫画という手法をもって打ち破ったんですから、もうやったぜ、という感じですね。
この本だったら、何年経っても大丈夫だと思うんですよ。
どんどん若い人が育ってきても、漫画という形式のこれを読めばわかってくれる。
発行部数何百万部の新聞や何千万人の視聴者に向かって放送するテレビなどでどういう情報を流そうとも、これさえ読んでおけばかなり多くの人が変わるという自信はあります。
縦の関係を寸断して偽の歴史を刷り込もうというマスコミのやり方に対抗して、祖父から孫までの世代間の縦の関係を復活させるための武器としてこれは大きいと思うんです。

(「日本の息吹」平成10年8月号)

「公」が蔑ろにされている、という現状は20年経っても全然改善されていない、それどころかむしろ悪化しているとしか思えない状態です。
『戦争論』の「個と公」のテーマは、今こそ必要とされるものではないでしょうか。

『戦争論』で世代を繋いだ、当時80代の戦場経験者は、現在は100歳以上、多くが鬼籍に入られていることでしょう。
そうなると、『戦争論』が20年前に起こした奇跡すら、忘れられてしまいかねません。
あの時に果たしたことの意義は、絶対に記録に残しておかなければならないと思います。

明日・8月12日(日)、東京MXテレビの『激論!サンデーCROSS』(11:59-13:25)の「激論CROSS」のコーナーは、
「“戦争論”から20年~太平洋戦争をどう捉えるか~」
よしりん先生と呉智英氏が登場!
お見逃しなく!

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