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2018.07.18(水)

二人の最初の読者

 

『ゴーマニズム宣言』や『よしりん辻説法』のコンテができたらまず秘書・岸端に見せる。
岸端はもう10年以上、わしの最初の読者である。
彼女はわしの目の前で、笑いながら読むし、読了後の感想は、まるでもう一人のわしがいるかのように、わしが狙った通りの箇所を指摘して、具体的に思ったことを言葉にしてくれる。

何かを感じることと、それを言語化する能力は別だ。
岸端を雇ったのは、『ゴー宣』の一本一本の感想を次々にメールで送って来て、その感想の言語化が特別に優れていると思ったからだ。
岸端は言語化能力が優れているから、自分の描いたものが、他人に「伝わってるな」と確信させてくれるのがありがたい。

だが、長年やっていると、ひょっとして岸端にしか伝わっていないのではないかと疑うことがある。
だから読者からの「面白い」という、たった一言でも、「岸端以外の人にも伝わっている」という安心を得ることができる。
実はそれでも愛読者だけじゃないかと疑うのは、もうわしの性分だ。
新しい読者を獲得できなければ、絶対に安心などできない。

軌道に乗った作品の感想は、まず岸端に読ませるのがいいのだが、フィクションの新作の場合は別だ。
実は『おぼっちゃまくん』は、まず妻に見せている。
妻はコンテを読んでる最中、さっぱり笑わない。
気に入ったら「面白い」と言葉少なく言うだけだ。
もっと褒めて欲しいから、次に岸端に読ませるのだ。
すると岸端は馬鹿笑いしながら電話をかけてくる。

だが、ギャグ漫画や、完全新作漫画の場合は、外している場合がある。
さっぱり「面白くない」場合があるのだ。
そんなとき、妻は冷酷に「面白くない」と言うことができる。
なぜ面白くないのか、どうすれば面白くなるのかを言語化する能力が妻にはない。
だからすごく腹が立つ。
腹が立って、わしが怒り出す場合もある。
それでも冷酷さでは、絶対に人に負けないから、フィクションの新作は妻の審判を仰ぐことにしている。
ただし、『ゴー宣』を妻に見せても駄目だ。
論理的思考能力がない、つまり馬鹿だから理屈は分からないのだ。