クマラスワミ報告書を巡ってまたも譲歩
村山談話・河野談話に未来はあるか?
第72回 クマラスワミ報告書評価をめぐってまたも譲歩
クマラスワミ報告書が事実の根拠としたものは、
吉見義明ですら削除を求めるヒックスの本と吉田証言、
あとは荒唐無稽な慰安婦証言だけである。
つまり、事実関係における信憑性はゼロなのである。
だが信憑性ゼロの「事実」に基づき、報告書は結論として、
以下の6項目を日本政府に勧告した。
1、第二次世界大戦中に日本帝国陸軍により開設された
慰安所制度は国際法違反であることを認め、
法的責任を受け入れるべきである。
2、軍隊性奴隷制の被害者個人に補償を支払うべきである。
3、すべての関連資料を公開すべきである。
4、女性被害者に書面で公式に謝罪を行なうべきである。
5、歴史的事実を教育課程に反映させ、問題理解を向上
させるべきである。
6、慰安婦募集および慰安所開設に関与した者を特定し
処罰すべきである。
報告書および勧告は1996年4月10日のジュネーブにおける
国連人権委員会で、その評価が討議されることになった。
これに対して外務省は珍しく40ページに及ぶ詳細な
反論文書を作成。
報告書の事実関係は、中立性が疑われている吉田証言や
ヒックスの著作から都合のいい部分だけを取り出しており、
しかも情報の裏付けをとった形跡がないこと、
慰安婦の証言も確実なものではないこと、
一方で米軍報告書のような、自己の主張に都合の悪い資料を
隠していることなど、かなり的確な内容だった。
そして反論書では、委員会がクマラスワミ報告書を
「明確に拒否」するよう「強く希望する」と主張していた。
日本政府が国連機関に提出された文書をここまで強く批判
したのは、まったく異例のことだった。
ところがこの文書はいったん提出されながら、
すぐに撤回され、別の文書に差し替えられた。
差し替えられた文書は分量もずっと少なく、報告書の批判は
わずか半ページ、しかも事実関係の信憑性に関する批判は
すべて消えていた。
代わりに日本政府は「河野談話」などで対処してきた
といったことが列挙され、
最も肝心な、報告書を「拒否」せよという要求も消えていた。
またもや日本政府は、してはならぬ譲歩をしてしまったらしい。